Japanese
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研究と報告
主として30歳台女性に発病する妄想・幻覚状態について—その状況論的考察
Uber den paranoid-halluzinatorischen Zustand der hauptsächlich in 4. lebensjahrzehnten Frauen auftretenden Psychosen: Diskussion über die Situationen
市川 潤
1
,
斎藤 征司
1
Jun Ichikawa
1
,
Seiji Saitoh
1
1弘前大学医学部神経精神医学教室
1Psychiatrische und Nervenklinik der Universität Hirosaki
pp.405-411
発行日 1970年5月15日
Published Date 1970/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405201615
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I.はじめに
精神分裂病が“Gruppe der Schizophrenien”(Bleuler, E.)として種々の臨床類型をその内に包含することは,内因性精神病の疾病学が論ぜられる場合に常に問題とされるところである。またそれ故に,それらの臨床類型についてどのような観点から検討を加えるにしても,精神分裂病一般の研究としてはその結論にさまざまな異同を生じてくることは当然の帰結であろう。ある論題についての研究を相互に比較することができるためには,その研究対象が同質のものでなければならないことは論をまたないところである。しかしながら,研究対象の選択にさいしての依りどころが疾病学にしても類型学にしても,それぞれにはまた依って立つところの観点の相異があり,一概に是非を論じ難く,ここにも臨床精神病理学の問題点がある。
最近Pauleikhoffは疾患の発端・病像・経過・生活史・人格・状況(主として発病と経過に関与する全体的状況)ならびに予後などの諸因子を総合的に考慮に入れたうえで“30歳台における妄想・幻覚精神病”を一つの精神病理学的疾患単位として記載した。かかるPauleikhoffの疾患概念は,文字通り“30歳台における妄想・幻覚状態を示す精神病”のすべてを含むものではなく,前述のような観点からの諸条件を充足する比較的出現頻度の低い疾患である。
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