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研究と報告
医療扶助患者の精神医学的調査(第2報)—神経症の特徴とその家庭環境
Neuropsychiatric Examination of Charity Patient (Part 2): A Characteristic of Neurotic Patient and its Environment
三好 敬一郎
1
Keiichiro Miyoshi
1
1岐阜大学医学部精神神経科教室
1Neuropsychiatric Department, Gifu Univ. School of Med.
pp.712-716
発行日 1969年9月15日
Published Date 1969/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405201516
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Ⅰ.緒言
神経症が社会病現代病といわれる側面を有し,社会的または文化的情況を背景とし,それらの時代的変遷によつて外包的特色を付与されることは,すでに多くの学者によつて指摘されているところである1)2)(Petrilowitsch,加藤正明)。したがつて日本の社会に住むわれわれ日本人が示す神経症の特性3)にも,日本的といわれる特徴が,日本の社会構造,日本人の生活様式などとともに当然現われうると考えられる。家長を中心とした日本的な家族制度4)を土台とし,主人と妻,嫁と姑との関係,本家を中心とした分家との関係などから,家族成員に独特の葛藤を生じ,そこに神経症の要因がみいだされるであろうことは想像にかたくない。ところがこの日本的な家族制度は,近来,とくに大都会においては,その構造を変えつつある。古い習慣が滅びんとするところには,また当然それに応じた種々の葛藤が生じ,神経症の特徴も,それに応じたものとなつていくであろうと考えられる。
現代の日本社会では,このように古い家族制度の崩壊と関連して,経済的な状況が変わりつつあり,国民所得増大のかげには,経済情勢の変化とともに,いわゆる低所得者が種々の問題に不平不満をもつていることは想像にかたくない。精神病学においても,社会的階層と精神病の関係について論ぜられ,低所得者層に精神病の有病率が高いという結果が帳告されている6)。神経症についても同様の傾向がうかがえ,とくに生活保護患者において有病率の高いことは,著者が前報において報告したとおりである7)。
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