Japanese
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研究と報告
医療扶助患者の精神医学的調査(第1報)—とくに神経症を中心として
Neuropsychiatric Examination of Charity Patient: especially about Neurosis
三好 敬一郎
1
K. Miyoshi
1
1岐阜大学医学部精神神経科
1Neuro-psychiatric Department, Gifu Univ., School of Med.
pp.317-324
発行日 1966年4月15日
Published Date 1966/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405200994
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I.緒言
神経症が社会病あるいは現代病といわれ,社会的条件と関係ある側面を有することは,すでに多くの学者により指摘されているところである。複雑な現代社会が,神経症の発現に影響を与えていることは,各国に共通のことであろうが,とくに日本においては,敗戦という国民にとっては初めての経験と,それに伴う社会的文化的構造の大きな変革が急激に起こった。
他面また敗戦後,医療保険,労働保険などの医療保険制度の普及や,種々の年金などの,社会保償の制度が徐々に確立されつつある1)。このような事情を考えれば,わが国において戦後の神経症の増加の要因には敗戦に伴う社会構造の変化というような条件を考えねばならぬだけではなく,種々の保険制度の普及,社会保償の確立というような社会制度の発展,あるいは医学その他の技術革新に伴う社会状勢の変化も考えなければならない。著者はこの最後の点についてすでにべつの機会に論じたが,そのさいいわゆる保健薬の常用者が健康人に意外に多く,その服薬の動機その他の事情にもとづき,考えられる心理機制に神経症発生の一つの条件があるのではないかと結論した2)。このような推測は,近時向精神薬が数多くつくり出され,神経症に対してもこの種の薬剤が投与されているにもかかわらず,実際臨床面においては,薬剤による軽快率の上昇が認められないというような報告によつても裏づけられている3)。このような事実には,日本人の間に長い問培われてきた治療ということに対する共通した考えかた,治療すなわち薬剤という誤つた考えかたにあることがうかがわれる。
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