動き
日本におけるFrankl教授—その業績と影響
小田 晋
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1東京医科歯科大学総合法医研究施設犯罪心理学研究室
pp.168-173
発行日 1966年2月15日
Published Date 1966/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405200968
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1)Frankl教授の業績とその成立
Victor Emil Frankl教授は,戦後日本で知られるようになつた西欧の精神医学者のなかでも,もつとも親しまれ,敬愛されているひとりである。その影響はただ神経症論,心理療法技法論,実存分析の理論などの学問的方面にとどまることなく,多くの読者たちの人生の導き手として,人間性喪失の危機に立たされている現代人の心の支えとしての役割をはたしてきたといつていい。その意味で,未見の教授を敬愛する日本の読者たちにとつては,単に活字を通じてではなく,直接その人柄に接したいという希望が特別に強かつたといえる。その機会がおとずれた。教授は何度目かの世界一周の講演旅行の途中,昨年(昭和40年)10月13日から4日間,日本に立ち寄り,名古屋,京都,東京での3回の講演を通じて日本の読者たちに直接語りかけて,霜山徳爾教授の司会の言葉をかりると,それはまさにweder Wahn noch Halluzinationとしてかれらの期待を満たしたのである。
ここではFrankl教授の日本での講演の要旨を紹介するとともに,その業績と理論の成立について簡単にふれておきたい。
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