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資料
東ニューギニアにおける民族精神医学的調査(その1)
Ethnopsychiatric Studies in the Eastern New Guinia
荻野 恒一
1
K. Ogino
1
1南山大学
1Nanzan Catholic Univ.
pp.1015-1021
発行日 1965年11月15日
Published Date 1965/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405200931
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I.呪術と妖術の暗闇の世界
地球が15億年といつた尨大な年代をもつているのに対し,人類の歴史はたかだか60万年を出ないというし1),とくに道具の製作と死者の埋葬という人間固有の営みを行なうhomo sapiensの誕生は,先史考古学者によつては,たかだか5万年前という2)。そして4万年前の策四紀氷河期に,インドあたりに住んでいた人類の一部は,東洋からフィリピンを通つて(インドネシアあたりを通つてという説もあるが)ニューギニアへと,さらにはオーストラリアへと渡つていつたことは,種々なる先史考古学的知見を通じて,十分に想像しうるところであるという2)。また私は以前から「種々雑多な未開の地の文化現象を,時代時代に応じて,あるいは他の土地に伝播していくに従つて変貌していつた文化の層に分類し,より深層へと,すなわちより古代へとさかのぼつて純粋な太古の文化をたどつていこうとするSchmittら,いわゆるウイーン学派の方法」に,深層心理学と類似の方法を見て,興味深く考えていた3)。
こうしたことから,私は,南山大学人類学科のスタフメンバーといつしよに東ニューギニアに旅だつたとき,心のどこかで「この見知らぬ未開の地への旅が,自らの無意識を求めていく旅になりうるかもしれない」というとほうもない期待をいだいていた。
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