特集 向精神薬・抗けいれん剤の効果判定法
効果判定法の研究をめぐつて
懸田 克躬
1
1順天堂大学医学部
pp.809-812
発行日 1964年11月15日
Published Date 1964/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405200761
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どのような治療法であつても,いつでも,その治療法が,ある疾病や症状にどの程度効いたかという吟味,いわば,効果の有無やその有効性の度合いについての勘案がなされている。薬物を介する療法でも,当然に,他の療法の場合と同じようになされてもいるし,しなければならないことはいうまでもない。ある薬物の適用範囲もこのような評価から生まれてくるわけである。この評価という過程はいつも意図的に組み立てられるわけではない。われわれは,しばしば,個人的な未分節的な使用経験からつくりあげられるいわゆる「臨床的経験」という素朴なふるいに頼ることをしていたのであつた。あるいは,ひとりびとりの,非計画的な「臨床的経験」の集積が生みなす帰結を待つて結論し,しかも,時間の要因が,おそらくは,大きい比率を占めているに違いないこの集団的な評価法は,ある報告者の主観的評価は正しくある報告者の同様の評価は当らぬものであつたに違いないにもかかわらず,結果としてはかなり正鵠を射たものとなることも,われわれの経験したことであつた。このような事情は,精神医学というわれわれの専門領域においても同じであり,さまざまの療法が,この評価法のふるいにかけられて姿を消していつたことは,われわれの臨床生活における経験として身近かに見てきている。
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