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I
精神医学の疾病論はKraepelinの構想のなかでその最終的な形式をみいだしているように思われる。たしかに,内因精神病の領域では,疾患単位を中心とする彼の精神医学的構想はこんにちでもいぜん実証性をもち,とりわけ実地的観点からは欠かすことができない。しかし他方では,「内因」という概念の相対性,分裂病圏と躁うつ病圏を明確に区別しにくい難点,いわゆる内因反応型の問題,精神病症状の特殊性の問題などがあらわれ,また,初め分裂性精神病を中心としていた活発な論争は,第二次大戦以後,抑うつ性精神病の分野にまで蔓延してきている。新しい類型も続々と生まれている(Büger-PrinzのEntwurzelungsdepression,SchulteのHeimkehrerdepression,Entlastungsdepression,Häfnerのexistentielle Depression,Lopez lborのanxiety thymopathy,Weitbrechtのendoreaktive Dysthymieなど)。結局,内因精神病の疾病学では,数十の見解があるが,どれも一致していない。それというのも,ここでは鑑別診断学の諸前提がまだみたされていないからである。したがつて,われわれはK. Schneiderとともに鑑別類型学にとどまるしかない。
Janzarikは,内因精神病におけるこうした窮状の由来を,精神病理学的所産がそのまま疾病分類の基盤として使われている反面,精神病理学的研究自体が自然科学的先入見にとらわれているという「精神医学における自然科学的謬見」のなかに見,ここから脱出するためには,疾病学的諸慣習から独立な基礎研究として自覚した精神病理学を用いてすすまなければならぬと主張する。疾病学的に中立な基礎研究としての精神病理学はもつぱら心理学的方法だけを使用し,精神病的現象をそのseelische Eigenbestimmtheit(Kisker)において研究しようとする。こうしてえられた洞察はそのあとで病因論・経過・治療などの問題へ臨床的に適用される。
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