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展望
最近15年間の妄想研究(1945〜1959)—その2 人間学的研究
Die Wahnforschung in den letzten 15 Jahren (1945~1959). Ⅱ. Anthropologische Methode
島崎 敏樹
1
,
井上 晴雄
1
,
中村 舜二
1
,
阿部 忠夫
1
,
豊田 三郎
1
,
瀬川 浩
1
,
宮本 忠雄
1
,
斎藤 幸雄
1
,
倉持 弘
1
,
梶谷 哲男
1
,
金森 健
1
,
中根 晃
1
,
矢崎 妙子
1
,
大森 広子
1
1東京医科歯科大学神経精神医学教室精神病理学グループ
pp.65-80
発行日 1960年2月15日
Published Date 1960/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405200183
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従来の精神病理学では,幻覚と妄想がその中心問題で,個々の症状を現象学的に分析記載するにとどまつていたことは,すでに「記述的考察」でのべたとおりである。1部では,真性妄想,妄想様体験反応,パラノイアに分けて紹介したが,人間学的研究では,そのような分類をして紹介することは不可能であるし,また,そうする必要もない。極端にいえば,人間学的考察方法において,一症状としての妄想だけをとりあげることは適当ではあるまい。なぜなら,現存在分析や了解的人間学の立場にたつ諸研究は個々の症状だけを問題にしているのではなく,むしろ妄想や幻覚などの症候群をあらわす病者の人間的現存在の特定の変動,すなわち独特の現存在経過や現存在構造を問題にしているからである。
病者の特有な世界を人間学的に理解し,幻覚や妄想などの諸症状を病者の変様した世界の表現としてとらえることが,人間学的立場から妄想症候群を解明しようとする研究老たちの目標であることはあきらかである。しかし人間学的研究のなかにも,現存在分析,実存分析,了解的人間学,哲学的人間学などいろいろの呼称があるように,研究者のひとりひとりがその背景とする思想や立場を異にしているので,記述的方法による研究のような区分をして紹介することはむずかしい。したがつて,ここではL.Binswanger,A. Storch,R. Kuhn,H. Kunz,E. Straus,W. v. Baeyer,J. Zutt,C. Kulenkampffらの,妄想問題に関係ある諸研究を順次紹介することにする。
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