Japanese
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研究と報告
感応性精神病の事例—症状展開の社会学的考察
A Case of Communicated Insanity: A sociological Study on Psychopathic Development
白石 英雄
1
H. Shiraishi
1
1三重県立高茶屋病院
1Takachaya Mental Hospital, Mie
pp.47-52
発行日 1960年1月15日
Published Date 1960/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405200179
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Ⅰ.緒言
私はかつてBergson,Storchらの社会学的,人間学的な考察を参考にしながら,1人の急性精神病者について社会的ならびに心理的な分化性の変動を追跡し,その症状の展開・変遷を考察した。それは個人の社会的および心理的な生活圏の変動—分化し開いた大きな生活圏から混沌とし閉じられた小さな生活圏への変化と,その逆の変化—を個人の精神病理学的な状況と対照しながら考察したものであつた。それによると一定の素質を備えた患者が社会的・心理的な葛藤にあつて心身の勢力を消費し,勢力を節約せんがための一次的防御手段として社会に対し封鎖的様式をとり,また心理的にも閉鎖的となつて社会共同存在から遊離する。社会共同存在からの遊離はかえつて個人に過度の心的緊張を要求し,さらに勢力を消耗さすために二次的な防御手段として遊離の程度が強化される。このようにして孤立化が生じ,その孤立した姿は深い実存の不安を含むものであり,かつ心的水準の低下の結果として未分化な諸種の心性の出現を招来するものである。そしてそれがとりもなおさず精神病理学的な病像であると考えられた。今回一家8名のうち全部が急性精神病ないし精神的な失調をきたし,前もつて1名,そののち一挙に5名が集団的に入院してきた事例があつたので,さきに個人でなした考察の方法を家族単位という次元に適用してみた。この事例の家族の社会的・心理的な分化性に焦点を合わせ,その孤立化してゆく過程(未分化な状態に陥る過程)と,呈した精神病理学的な像とを関連せしめつつ考察する。
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