Japanese
English
展望
中枢神経刺激剤
Central Nervous System Stimulants
森 温理
1
A. MORI
1
1東邦大学医学部精神医学教室
1Department of Neuropsychiatry, School of Medicine, Toho University
pp.671-688
発行日 1959年10月15日
Published Date 1959/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405200139
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Ⅰ.緒言
一般に中枢神経系に作用する薬物には,抑制作用を有するもの(Depressants)と刺激作用を有するもの(Stimulants)とがあり,前者には従来からの鎮静・催眠剤や抗痙攣剤のほかに,最近数年間とくに脚光をあびてきた新しい種類の薬物である精神安定剤Tranquilizersがあることは周知のとおりである。精神安定剤の代表的なものであるChlorpromazine,Reserpineなどが精神疾患の治療に導入されて以来,精神疾患の薬物療法ははじめて真にその名に価いするものとなり,これによつて精神疾患治療の概念も大きく変換するにいたつたのである。
これら精神安定剤の使用対象となる領域は,その最も重要な対象である精神分裂病をはじめとしてぎわめて広範囲にわたつており,各領域における応用についてはすでに枚挙にいとまがない。しかし精神疾患の薬物療法において,精神安定剤が必ずしも本来の適応とはならない一群の疾患のあることもまた注目すべきことである。たとえば,内因性うつ病をはじめ諸種のうつ状態もその一部をのぞいては元来精神安定剤の適応とはいえないが,これらの臨床上に占める位置はきわめて大きい。また疲労・倦怠感など精神的活力の減退を訴える神経衰弱状態やある種の神経症の場合も同じことがいえる。さらに精神分裂病においても無為無関心,自閉,感情鈍麻などをきたした陳旧性のものでは,理論的にいえばむしろ刺激ないし賦活効果のある薬物が適応と考えられるであろう。これら多くの状態に対して中枢神経刺激剤の臨床的応用が約束されるものということができる。
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