Japanese
English
紹介
—E. クレッチユマー 著 新海 安彦 訳—精神療法
Psychotherapeutische Studien
笠松 章
pp.62
発行日 1959年1月15日
Published Date 1959/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405200053
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
本書は,現代ドイツ精神医学界の最高峰であり,本年4月日本医学会総会を機会に来日を予定されている,チュビンゲン大学教授,E. クレッチユマーの主著の1つである「Psychotherapeutische Studien」の全訳である。1949年の出版でわが国でもひろくよまれているから,いまさら新刊紹介でもないのであるが,新海君苦労の完訳により,あらためて読みなおす機会があたえられたので,ここに読後感をのべてみたい。
精神医学では,当然のことながら,精神現象ととりくまなくてはならないのであるが,この際3つの基本的立場が区別される。第一は,精神現象の主観性をそのまま容認し,人間のもつ諸体験を直接学問の対象とする体験学の立場である,精神疾患の生物学的起因が不明のためでもあるが,精神医学の実践は多くこれに準拠している。この立場では精神現象のもつ生物学的基盤は無視されないまでも,副次的役割をもつことになる。したがつて,精神医学が科学としての客観性が失われ,観念的傾向をおびることはやむをえない。第二は,人間体験のもつ主観性を排し,精神現象を少くともその発祥において,生物の環境に対する適応としてみる行動主義的立場である。精神現象のもつ生物学的基盤を追求しうる点では有力であるが,ここでえられた諸理論は精神医学の臨床が対象とする複雑な患者の精神症状を説明するためには余りにも無力である。
Copyright © 1959, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.