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展望
最近のヨーロッパにおける分裂病の精神病理学の動向について
On the Tendency of the Psychopathological Approach of the Schizophrenia in Europe
村上 仁
1
M. MURAKAMI
1
1京大精神神経科
1Department of Neuropsychiatry, School of Medicine, Kyoto University
pp.3-8
発行日 1959年1月15日
Published Date 1959/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405200041
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最近十数年の間にヨーロッパ,ことにドイツにおける分裂病の精神病理学は相当顕著な動きを見せつつあるように思われるので,以下にその二,三の動向について簡単に述べてみたいと思うが,それに先立ちクレペリン,ブロイラー以後の従来のドイツ学派の見地について一言しておく,
a.まずHeidelbergのK. Jaspers,H. Gruhle,K. Schneider等は分裂病が器質的原因による単一な疾患であると仮定し,主としてその精神症状を「現象学的」に記載することに努め,かくして得られた作為現象,幻聴,妄想知覚などの症状は心理学的には了解不能のものであり,疾患の根底にある病的過程によつて生ずるものであることを主張した。ドイツではこの考えは最も厳正な学問的見方であるとされ,最近に至るまで,この見方に対する正面からの批判は殆んど見られなかつた。
b.これに対し,TubingenのE. Kretschmerは精神分析的見方をとり入れて,分裂病の症状も人格の発達史的退行現象として理解しようとし,また彼一流の性格学説に基き,分裂病質的性格と分裂病との間にある程度の移行を認めようとしたりした点で特色があつた。
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