巻頭言
精神科医は役に立っているのか
河西 千秋
1
1横浜市立大学医学群健康増進科学
pp.1028-1029
発行日 2013年11月15日
Published Date 2013/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405102591
- 有料閲覧
- 文献概要
自殺予防対策に関する実践・研究に携わって十年以上が経った。後輩から何か研究をしてみたいという相談を受け,それならばと救命救急センターに搬送される自殺企図者に関する研究を勧めたのが始まりだった。
そもそも,患者さんと治療者の苦労が大きければ大きいほどそれを研究に昇華させ,双方の労苦に何らかの解決の方向性を見出していくという考えの下に,私自身は研究をしてきた。患者さんは自己治癒力を持っているので,乱暴な言い方をすれば,少しばかり医者の性能が悪くても治る人は治るわけで,難しい病気,困難な課題に取り組んでこそということで,それまで私は重篤副作用や難治性の病態研究を行っていた。一方で,医者になって以来,身近で患者さんや知人の衝撃的な自殺を経験し,そのことで独り反問し続ける中で,何とか自殺の真実に近づくことができないものかと考えていた。しかし当時の私は,あまりにも広大な自殺学の世界を前になす術もなく,また,自殺企図者はheterogeneousで研究の対象にはなり得ないと思っていた。
Copyright © 2013, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.