書評
精神科医が見たレオナルド・ダ・ヴィンチ
越野 好文
1
1金沢大学大学院脳情報病態学(神経精神医学)
pp.337
発行日 2005年3月15日
Published Date 2005/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405102485
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レオナルド・ダ・ヴィンチは謎に包まれている─ダ・ヴィンチその人も,そしてその作品も。「最後の晩餐」は謎に満ちており,「モナリザ」もしかり。そしてダ・ヴィンチ出生の謎,鏡文字の謎。それらには,ダ・ヴィンチ自らが仕掛けた謎もあれば,歴史のベールに覆われ,謎となったものもある。
それらの謎に立ち向かったひとりの精神科医にして名探偵が,元仙台大学大学院教授の一条先生である。本書は先生のダ・ヴィンチの謎解明プロジェクトの記録である。わずか163ページのコンパクトな本であるが,その背後には丹念に集められた膨大な文献・資料,現場へ出かけて行っての綿密な作品の観察,そして深い思索・推理が隠れている。絶版になった資料の原本を入手するためにアメリカの古書店にまで注文したとのことである。そしてできあがった本は,多くの挿絵を活用し,西洋美術に造詣の深い人にも,それほどでもない人にもわかりやすい。しかも,説得力を持って良質の探偵小説のようにダ・ヴィンチの真実への道を解き明かしてくれる。
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