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はじめに
2011年3月11日に生じた東日本大震災は岩手,宮城,福島の東北3県を中心に多くの被害をもたらした。被災直後より全国の精神科医療機関から「こころのケアチーム」が被災地に派遣されたが,そのほとんどは成人を対象にしたものであり児童精神科医による子どもを対象とした「こころのケアチーム」は非常に少数であった。
独立行政法人国立国際医療研究センター国府台病院児童精神科は1948年に開設された長い歴史を持つ,児童精神科医療のモデル的な診療の場を目指して活動を続けている診療科である。そして当院は震災直後より宮城県の要請を受け,宮城県石巻市内でこころのケア診療活動を行っており4),現時点でもその活動を継続している。
宮城県石巻市は宮城県東部に位置する人口16万人(被災前)の宮城県内第2の都市である。今回の震災では市内の沿岸部および北上川周辺で津波による莫大な被害が生じ,震災による死者および行方不明者は3,000人を超え,家屋の被害の甚大であったため重篤な外傷体験をした子ども達が多いと推察される。小児において深刻な外傷体験が心的外傷後ストレス障害(post-traumatic stress disorder;PTSD)を中心とした精神疾患への発症のきっかけとなる場合もあり1~3),子どものこころに対する十分な支援が必要とされる地域である。
元来この地域には児童精神科の専門医療施設は存在せず,市内の精神科医または小児科医および宮城県子ども総合センターの出張相談がその業務を補完するような形で行われていた。本稿ではこのような児童精神科とは馴染みのない地域で行ってきた当院の支援活動とその問題点について明らかにしたい。
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