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特集 アルコール・薬物関連障害
いわゆる「パーソナリティ障害」症例におけるアルコール・薬物問題をどのように認識し,対応するか―Khantzianの「自己治療仮説」と「信頼障害」という観点から
Understanding and Treating Alcohol and Drug Problems in Patients with Personality Disorders
小林 桜児
1
Ohji KOBAYASHI
1
1国立精神・神経医療研究センター病院精神科
1Department of Psychiatry, National Center Hospital, National Center of Neurology and Psychiatry, Tokyo, Japan
キーワード:
Personality disorder
,
Alcohol abuse
,
Drug abuse
,
Self-medication hypothesis
Keyword:
Personality disorder
,
Alcohol abuse
,
Drug abuse
,
Self-medication hypothesis
pp.1097-1102
発行日 2012年11月15日
Published Date 2012/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405102312
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はじめに
精神科臨床の現場で「パーソナリティ障害」という単語は,しばしば「境界性パーソナリティ障害」(以下BPD)の同義語として用いられることが多い。さらにBPDの診断基準に「自己を傷つける可能性のある衝動性…例:物質乱用」(DSM-Ⅳ-TR)1)と記載されているとおり,アルコールや薬物の問題を合併することも少なくなく,実際,海外ではBPDにおける物質乱用の併存率は35%に達すると報告されている3)。しかしBPD患者が呈する慢性的なアルコール乱用や向精神薬の過量服薬は単なる「振り回し」としかみなされず,物質使用障害という観点が援助者の側に欠けていることもまれではない。BPD患者が物質乱用を併存すると自殺の危険性が高まることも指摘されており9),BPD患者における物質乱用の問題の有無について早期に確認し,病態を理解した上で適切に対処していくことは,依存症を専門とする臨床家ならずとも切実な課題といってよい。
本稿では,いわゆる「パーソナリティ障害」,すなわちBPDにおけるアルコール・薬物問題の理解の仕方について,一つの切り口を呈示し,一般の精神科外来でも可能な対処の原則について論じてみたい。
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