書評
―P・フィレンチ,J・スミス,D・シャイアズ,M・リード,M・レイン 編著,岡崎祐士,笠井清登 監修,針間博彦 監訳―精神病早期介入―回復のための実践マニュアル
井上 新平
1
1高知大学医学部神経精神科学教室
pp.757
発行日 2012年7月15日
Published Date 2012/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405102231
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統合失調症の治療は発病早期から開始したほうが予後をよくできるという発想は古くからあり,わが国でも昭和30年代初頭,群馬大学精神科の臺弘教授は,同様の発想で再発予防5箇年計画(生活臨床)を立ち上げた。成果はその後の長期予後調査で明らかにされ,予後予測因子として最も重要なのは治療開始後2年間の経過であった。1990年代に入り,精神病の早期発見と早期介入がオーストラリア,ノルウェー,イギリス,アメリカなど世界各地で取り組まれ,その業績は日本でもしばしば紹介され活字にもなっている。本書はそのような世界的潮流のひとつ,イギリスにおける精神病早期介入チームの活動をまとめたものである。以下中味をごく簡単に紹介する。
「はじめに」で,早期介入の位置づけが記されたあと,テーマ1「アクセスと関係作りの改善」で,受診経路,関係作り,治療の展開などが扱われる。DUPの短縮が全国的優先事項とされ,中央値3カ月,6カ月を越えないことを目標としていることなど目を見張る。抗精神病薬についてはマニュアルらしく,何をどう使えばいいかがかなり断定的に書かれている。また治療関係作りの重要性が随所で強調される。
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