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第52回日本児童青年精神医学会は,11月10日から12日まで徳島市のあわぎんホールで,徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部精神医学分野の大森哲郎教授を会長として開催された。メインテーマは「子どもと大人の児童青年精神医学」で,シンポジウム6,教育講演13,研修コース11,症例検討4,セミナー4,共催セミナー4と充実した内容で,参加者1,232名,演題応募223題と盛況であった。
なかでも“目玉”は,英国で児童思春期精神科医の父と呼ばれるマイケル・ラター先生の特別講演であった。先生は,子どもの精神衛生に環境が与える影響(リスク因と,レジリエンス)についての大規模な疫学研究でも知られる。講演は,“Child & Adolescent Psychopathology:Past and Future”と題され,Developmental Psychopathologyのコンセプトについて,ビデオレコーディングで話された。続いて会長の大森先生が,講義内容について質問されたビデオも流された。密度の濃い講義に対し,大森先生が的確な質問をされたことで理解が深まり,「このような形式の特別講演もよい」と好評であった。ラター先生は子どもの発達に関する研究を,児童思春期精神医学の臨床に反映させることの重要さを強調された。また発達は生物学的因子のみではなく個人の経験(環境)にも影響を受けると主張され,精神科臨床では環境因を考慮することが重要であると再認識させられた。次いで精神病理の発達を考える時,単一の理論やメカニズムですべてを説明できないと言い切られ,偶像破壊的であれとのメッセージの中に,先生の真実に対する真摯な態度がにじみ出て,非常に感銘を受けた。
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