「精神医学」への手紙
東日本大震災被災者への精神科的対応についての私見―根こぎうつ病への注目を
佐藤 晋爾
1
,
朝田 隆
1
,
土井 永史
2
1筑波大学臨床医学系精神科
2茨城県立こころの医療センター
pp.922
発行日 2011年9月15日
Published Date 2011/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405101979
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震災から2か月以上過ぎ,「こころのケアが問題」という報道が出始めている。我々も,4月下旬,福島県相馬市で4日間,茨城県立こころの医療センターと合同の現地医療活動のお手伝いをさせていただいた。
被災地で避難者の方々のお話をうかがって,今回の震災の特徴は,よく指摘される「広域である」以外に,津波と地盤沈下で水没した地区があるという点ではないかと感じた。避難者の方々は「生まれ故郷がなくなった」「自分が育ってきた土地は海になって住めなくなった」「先祖代々の土地がなくなった」「墓がなくなった。親族に申し訳ない」とおっしゃっていた。これまでの震災は,「家屋や家財をなくす」ことはあっても,突然「土地を失う」ことはなかったのではなかろうか。被災者の方々がおっしゃる「土地」とは,まさに己のアイデンティティそのものであり,個人を超えて「引き継がれていく」ものとしての「土地」であろう。それを失うことの打撃は非常に大きいのではないか。
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