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私のカルテから
催吐剤イペカック(トコン)により心筋障害を来した神経性食欲不振症の1例
A Case of Anorexia Nervosa with Cardiomyopathy due to Ipecac
中井 義勝
1
Yoshikatsu NAKAI
1
1京都健康科学研究所
1Kyoto Institute of Health Sciences, Kyoto, Japan
pp.93-96
発行日 2011年1月15日
Published Date 2011/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405101772
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はじめに
神経性食欲不振症むちゃ食い/排出型や神経性過食症排出型では,むちゃ食い後に体重増加を防止するための代償行為のあることが知られている1)。代償行為として一番頻度の高いのは,自己誘発性嘔吐である。しかし,上手に吐けなかったり,吐き足りない時は,下剤や利尿剤を乱用することがある。いずれも,低K血症による不整脈のため死に至ることがある。
催吐剤イペカック(トコン)は入手が容易であること,確実に嘔吐が誘発できること,安価であることから,欧米では摂食障害のイペカック(トコン)による浄化行動が少なくない。Greenfeldらによると,851例の摂食障害外来受診者の7.6%がイペカックを使用していた2)。一方,Steffenらの最近の報告によると,むちゃ食い症状を有する患者の18%にイペカックの使用経験がある8)。日本では,摂食障害患者のイペカックの使用頻度は不明だが,欧米ほどは高くないと思われる。
イペカック(トコン)は,薬や毒物などを誤飲した時の初期治療の一選択肢として用いられる6)。しかし,本剤を連用した場合には,重篤な有害症状を来すことが報告されている。投与後の処置が不適切であったために死亡した事例も報告されている2,6,8)。
経過中,イペカック(トコン)を催吐目的で使用したため,クレアチニンフォスフォキナーゼ(CPK)や脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)7)が異常高値を示し,筋脱力や心不全の症状を来した摂食障害の1例を経験したので報告する。
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