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紆余曲折を経て,DSM-5に向けた改定作業が2013年を目標に進んでいる。各working groupでは,それぞれのカテゴリーを構成する候補障害を絞り込み,その輪郭や診断基準の枠組みを明確にしつつある。今回のDSM-5改定において,最大の注目点の1つは,強迫スペクトラム障害(obsessive-compulsive spectrum disorders;OCSDs)の動向であろう。そもそもOCSDsは,1990年頃にNew YorkのHollander教授を中心とするグループにより提唱された。彼らはこの中で,「とらわれ」や「繰り返し行為」などOCDに類似した臨床症状を有し,comorbidityなどの疾患相互関連,家族的ないし遺伝学的脆弱性,脳形態学的,脳機能的異常性といった神経生物学的背景などを特異的に共有する障害群をOCSDとして,たとえば「強迫性-衝動性」を両極とする軸上で連続的にとらえることを試みた。これはまさに,現在,そして今後も脚光を浴びるだろうスペクトラム概念の先駆けともいえるものである。
このworking group,すなわちObsessive-Compulsive Spectrum Work Group and Conferenceは,“APIRE/WHO/NIH Cooperative Research Planning Conferences;The Future of Psychiatric Diagnosis:Refining the Research Agenda”の一環として,2006年6月にWashingtonで開催された。この会議には欧米を中心に,摂食障害や衝動制御障害,遺伝学,あるいは動物モデルを含め,OCSD関係の研究者20名あまりが世界中から集まり,研究の現状,妥当性,臨床的有用性,そして今後の方向性や研究テーマなどを3日間かけ議論した。私もこの会議に招聘され,南アフリカのSeedat教授とともに,“obsessive-compulsive spectrum disorders;cross-national and ethnic issues”について講演した。この会議では,まずOCDと他の不安障害の異同の整理から始まり,各分野のexpertによる従来の研究のreview,特に①症候学的特徴,②comorbidity, ③家族,あるいは遺伝的要因,④病態,⑤治療など多角的側面から各候補障害を分析し,これら5因子のうち3因子以上を共有する十分なevidenceの存在を包含基準として,OCSD障害に該当するかを判定した。
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