巻頭言
「精神科栄養学」のポテンシャル
㓛刀 浩
1
1国立精神・神経医療研究センター神経研究所 疾病研究第三部
pp.632-633
発行日 2010年7月15日
Published Date 2010/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405101654
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今年1月,第13回日本病態栄養学会が京都で開催され,「メンタルヘルスと病態栄養─基礎から臨床まで─」というワークショップが行われた。筆者はこの学会の会員ではないが,「食事・栄養における脳由来神経栄養因子(BDNF)の発現調節とメンタルヘルス」という題で話すよう依頼された。食事・栄養によるBDNFの発現変化に関しては自前のデータがないばかりか知識も乏しかったため,文献をにわか勉強し,精神疾患におけるBDNFの発現変化について多少のデータを出してお茶を濁すしかなかった。驚いたことに,ワークショップを企画されたと思われる川崎医療福祉大学臨床栄養学科の渡辺明治先生は今年のAlbireo awardを受賞され,受賞講演は「n-3系多価不飽和脂肪酸によるストレス適応能の強化とその脳内分子機構」であった。
思うに,栄養学の医療者・研究者は,高血圧や糖尿病,肥満などの身体疾患の栄養管理やその研究にとどまることなく,メンタルヘルスを次なるターゲットに見据えているのではなかろうか。筆者がワークショップに引っ張り出されたというのも,栄養学が精神疾患の治療に有効であるポテンシャルに関し,専門家(自分でいうのはおこがましいが)はどの程度研究しているのか聞いてみたかったに違いない。聴衆は「専門家」のあまりの不勉強に失望したのではないかと危惧している。
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