「精神医学」への手紙
認知症のないレビー小体型認知症はあり得るか?―レビー小体病の診断への懸念と提案
上田 諭
1
1日本医科大学精神医学教室
pp.515-517
発行日 2010年5月15日
Published Date 2010/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405101635
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レビー小体型認知症(dementia with Lewy bodies;DLB)の診断には,臨床診断基準改訂版(2005)9)が広く用いられますが,そこには今後解決すべき1つの問題があると思われます。それは,病名にも含まれる「認知症」をどう扱うかという点です。近年,認知症を認めない,あるいは治療とともに認めなくなったと考えられるDLB症例がしばしば報告されます1,3,10)。認知症がなくてもDLBであるのか,あるいは現在のDLB概念自体に問題があるのか。認知症であるかどうかは,診断そのものの意義の面からも,治療対応の面からも重要な観点であり,先の「薬剤誘発性の幻視」のテーマ(「精神医学」52巻3号)に続き,本稿ではこの問題を提起したいと思います。
DLBの発見者であり診断基準作成にも参画している小阪5)の邦訳を引用しますが,前述の診断基準の「中心的特徴(診断に必須)」は,もとより「認知症(正常な社会的・職業的機能に支障を来すほどの進行性認知低下)」です。しかし,これにはただし書きとして,「早い時期には著明な,または持続性の記憶障害は必ずしも起こらなくてもよいが,通常は進行とともに明らかになる」と書かれているのです。この記載は,早期には認知症がなくてもよいとも読め,また「早い時期」がいつまでかはあいまいで,臨床診断上の「混乱」の要因になっていると思われます。
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