「精神医学」への手紙
てんかん診療は誰が行うのか―精神科における治療の再開に期待する
細川 清
1
1万成病院
pp.410-411
発行日 2010年4月15日
Published Date 2010/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405101612
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てんかんが三大精神病の1つといわれたのは,すでに遠い過去の夢魔と形骸になった。しかし,てんかんを持つ人が,神経・精神に問題を抱えていることに変わりはない。今,てんかん患者は,精神科診療の枠外にあり,“精神科離れ”といわれている。筆者はだいぶん前のことになるが,「迷える羊」1)と題して雑文を寄稿し,悩める人たちの放置された診療状況を嘆いた。てんかん学は進歩し,薬物の効果も上がってきている。加えて,難治性の発作や困難な処遇となっていた性格障害も減少している。しかし,てんかんの頻度は減少しているわけではない。どこかで,誰かが,てんかん診療を行っていることに変わりはない。アメリカ流にいえば,神経内科を軸に展開されているはずである。
それでは,てんかん診療は精神科ではもはや行われていないのであろうか。確かに“てんかん(性)精神病”は,適切な薬物療法によって減少している。“てんかん”が,精神障害の分類上消滅し,もし精神症状が出現すれば,精神障害に準じて位置づけられるようになった。精神科医が特に必要な症例は次第に減少し,難治性で性格障害を併合している症例に限られてきている。ほとんどの病者は小児期に発症するから,小児(神経)科を初診し,成人してもそのまま受診を続けている。いわゆるキャリーオーバーである。特発性の多くの類型は,治療方針が示されれば一般医のもとで治療されているのが現状である。事実,多くの患者は,なお伏して一般診療医に処方を願っている。偏見・stigmaはなお隠然と底流しているから,いつまでも自らの疾患を重篤なものと思いたくないであろう。
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