Japanese
English
特集 社会脳をめぐって
社会脳と脳神経基盤
Social Brain and Neuronal Basis
西谷 信之
1,2
Nobuyuki NISHITANI
1,2
1医療法人藤田神経内科クリニック
2京都大学医学研究科附属高次脳機能総合研究センター臨床脳生理学領域
1Fujita Neurological Clinic, HigashiOsaka, Japan
2Department of Brain Pathophysiology, Human Brain Research Center Kyoto University Graduate School of Medicine
キーワード:
Social brain
,
Social cognitive impairments
,
Social communication
,
Neuronal basis
,
Magnetoencephalography
Keyword:
Social brain
,
Social cognitive impairments
,
Social communication
,
Neuronal basis
,
Magnetoencephalography
pp.251-256
発行日 2009年3月15日
Published Date 2009/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405101382
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はじめに
複雑な現代社会の中で社会生活を円滑に送るためには,周囲の状況・空気をうまく把握し,他者と首尾よく関係する必要がある。霊長類,特に我々ヒトは,他者との相互理解のうえに関係を確立し,共同作業を行うことで社会を形成している。日常生活の中で,その状況にかかわらず,不断なく我々は「ヒト」という強烈な刺激を受けながら生きている。そのためには,我々は一個のヒトとして,周囲の人々の中で共同生活を営むことができるように適合・訓練された「ソーシャル・ブレイン」を保有し,最良のソーシャル・コミュニケーションを確立する必要があり,協調と競争のバランスの維持が重要である。ところが近年の社会構造の変化によって,我々の情報収集と理解能力に,さらにその結果として適切な行動表現に結びつける能力にまで変化が生じ始めているようである。
種々の場面で異なる社会的役割を上手に使い分ける能力を,どのように獲得し発展させていったのだろうか。近年この領域の研究が急速に進み,社会的能力「社会的認知social cognition」を発揮するために重要な脳の領域,すなわちヒトの社会的能力の中心的役割を担っている脳領域が明らかになりつつある。それらの領域が相互に連動し,複雑な情報処理を行っていると考えられるが,本稿では,ソーシャル・ブレインにかかわるヒト脳内の神経機構・基盤を点描する。
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