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はじめに
慢性疲労症候群(Chronic Fatigue Syndrome;CFS)とは,日常生活に支障を来すほどの疲労感が6か月以上続く状態を1つの病態概念としてとらえた症候群である。CFSの診断基準は,1988年にHolmesらを中心に米国CDC(Center for Disease Control and Prevention)によって初めて作成され14),1994年にはFukudaらによってCDC診断基準が改定された8)。本邦では,1990年に木谷らによって日本で初めてCFSの症例報告が行われた。その後,厚生省疲労研究班が発足し,HolmesらのCDC診断基準に基づき日本でのCFS診断基準が作成された。日本では,この厚生省CFS診断基準が用いられてきたが,その後十数年が経過し,疲労をより客観的に評価できるようないくつかの手法も開発され,CFS診療を担っている医師からもCFSをより客観的に診断できるような診断基準の作成が望まれるようになった。そこで,2006年6月,日本疲労学会に慢性疲労症候群診断基準改定委員会(委員長:倉恒弘彦)が発足し,1年間の検討が行われた後,実用的で国際的な共通化が保たれたCFS診断指針が2007年6月に発表された。
CFSについてはマスコミなどで取り上げられる機会が増加し,CFSという言葉は国民に普及しつつあるが,今なおCFSに対する適切な対応ができる医療現場はきわめて少ない。疲労の精査目的で1度は検査設備の整った病院への受診は必須であり,異常が認められない場合,原因不明の疲労について踏み込んだ精査をするために専門病院への受診が必要である。しかし,CFSに関しては,普段はプライマリケアを担う医療機関に受診し,年に1度から数回程度,専門病院に受診する,というようなスタイルが望ましい。残念ながら,筆者らは患者を地域の医療機関に紹介しても,「疲労は専門外なので,薬は処方するが,それ以外のことはできない」という返答を多数経験している。地域の医療機関に最も期待したいのは,患者個々人に応じた生活指導である。まずは,日本疲労学会によりわかりやすい診断指針が作成されたことにより,疲労を正しく評価できる医師の増加を期待したい。さらに,医療機関の医師だけでなく産業医,産業保健師,地域の保健師にもCFSについて正しい知識を持っていただき,生活指導を地域で行っていただけるよう啓蒙活動に努めるのが筆者らの課題でもある。
本稿では,日本の新しい診断指針を紹介するとともに,世界的に注目されている話題に触れつつCFSの概論を述べたい。
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