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ミニレビュー
哺乳類養育行動とその異常のメカニズム―精神疾患動態研究チーム
Molecular Mechanism of Mammalian Parental Behavior and Its Pathology
黒田 公美
1
Kumi KURODA
1
1理化学研究所脳科学総合研究センター黒田研究ユニット
1Kuroda Research Unit, RIKEN Brain Science Institute, Wako, Japan
キーワード:
Parental behavior
,
Medial preoptic area
,
MPOA
,
FosB
,
Extracellular-signal regulated kinase
,
ERK
Keyword:
Parental behavior
,
Medial preoptic area
,
MPOA
,
FosB
,
Extracellular-signal regulated kinase
,
ERK
pp.387-392
発行日 2008年4月15日
Published Date 2008/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405101193
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はじめに
早期の生育環境が子の発達に大きな影響を与えることは古くから知られている。環境のなかでも,子の主要な養育者との関係(通常は親子関係)はもっとも重要な要素の一つである。親子関係のさまざまな問題(児童虐待やネグレクト)は子のうつ病,適応障害,次世代への虐待の繰り返しなどのリスクを高める可能性がある5)。不適切養育を治療・予防するためには,まず養育本能を司る神経機構を明らかにしなければならない。
哺乳類の仔は幼弱に生まれるため,哺乳をはじめとして身体をきれいに保つ,保温する,外敵から守るといったさまざまな親からの養育を受けなければ離乳期まで成長することができない。これらの「仔の生存の可能性を高めるような親の行動」は養育行動と総称される10)。養育行動はすべての哺乳類の存続に必須であることから,親の脳内で養育本能を司るメカニズムも基本的な部分は進化的に保存されていると考えられる。したがってモデル動物を用いた養育行動研究が,将来的にヒトの養育行動とその異常の解明に役立つことが期待できる。本稿では,哺乳類養育行動の概要を簡単にまとめた後,マウスモデルを用いた最近の研究を中心に,養育行動を制御する脳領域,分子について概説する。他書も参照されたい10,11,17)。
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