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はじめに―生体腎移植の現状
近年,有用な免疫抑制薬が続けて導入されたことや内視鏡下ドナー腎摘出手術の定着などもあり,わが国において生体腎移植が増加している12)。2005年度の全国の腎移植実績は,総数994件中生体腎移植834件,献腎移植144件,脳死体から16件であった8)。最近の生体腎移植の特徴としては,以前では考えられなかったABO血液型不適合腎移植が増加(20.9%)し,その成績もABO適合腎移植と比べ遜色ない良好な成績となっている。透析を実施せず,ないしは直前に1回のみ行い,すぐに腎移植をした,いわゆるpre-emptive(先制の)の腎移植も13.4%に上る。両親からの提供が依然56.5%と多いが,最近では非血縁(夫婦)間の提供が25.1%と増加している。このように腎提供候補者の選択肢が多様化しており,それに伴い腎提供者選択において複雑な心理や動機が絡み,事例によっては精神医学的・倫理的に大きな問題が認められる場合もある。
日本移植学会は,2003年10月に倫理指針を改定した6)。そこでは生体臓器移植のドナーに関しては,親族(6親等以内の血族と3親等以内の姻族)に限定すること,提供は本人の自発的な意思によって行われるべきものであり報酬を目的とするものであってはならないこと,提供意思が他からの強制ではないことを家族以外の第三者が確認をすること,未成年者ならびに精神障害者は対象としないことなどを定めている。その後,2006年11月,日本移植学会倫理指針の生体腎移植の提供に関する補遺が発表された7)。そして生体腎移植実施までの手順として,レシピエント移植コーディネーター(以下コーディネーターと略す)や看護師,臨床心理士,メディカルソーシャルワーカーなどによる提供候補者の意思決定を支援できる医療体制を整備すること,最終的な提供候補者の自発的意思の確認は第三者による面接によって行うこと,第三者とは「倫理委員会が指名する精神科医などの者」とすることなどが明文化された。したがって,移植医療における精神医療の関与が今後いっそう要求されると考えられる。
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