オピニオン 労災適用の問題
労災認定におけるストレス評価の問題点と課題
丸山 総一郎
1
1神戸親和女子大学大学院精神医学研究室
pp.1205-1208
発行日 2007年12月15日
Published Date 2007/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405101115
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今,なぜ,労災認定でストレス評価が問題になっているのか
精神障害の発病やそれによる自殺には,あらかじめ発病の危険性のある特別な有害業務はなく,その点で,特定の有害業務に就くことで発病の危険性がある“職業病”とは異なる1)。つまり業務上の特別な心理的負荷や過重な環境ストレスによって発病する職場関連疾病という位置づけはできても,業務以外のことや個体側要因で発病する可能性があるため,認定数が少なかったのである。
1999(平成11)年7月29日,「精神障害等の労災認定に係る専門検討会」より作成された報告書に基づき,同年9月14日,旧労働省は,「心理的負荷による精神障害等に係る業務上外の判断指針」と「精神障害による自殺の取り扱い」を迅速かつ的確な認定を目指して策定した。指針では判断要件として,以下の3要件,①対象疾病に該当する精神障害を発病していること,②対象疾病の発病前おおむね6か月の間に,客観的に当該精神障害を発病させるおそれのある業務による強い心理的負荷が認められること,③業務以外の心理的負荷及び個体側要因により当該精神障害を発病したとは認められないこと,のいずれをも満たす精神障害を,労働基準法施行規則別表第1の2第9号「その他 業務に起因することの明らかな疾病」に該当する疾病として業務上と取り扱うこととした6)。業務による負荷強度の評価は,評価表やフローチャートを作成したことで運用が以前より容易になり,公平性も確保されやすくなった。その結果,精神障害等に係る労災請求・認定件数は急増し,それまで業務上決定がほとんどなかった自殺事案も認定が緩和された。
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