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はじめに
経頭蓋磁気刺激(transcranial magnetic stimulation,以下TMS)の歴史は比較的新しいものであり,以前は頭蓋骨を開けなければ行えなかった大脳への刺激を,非侵襲的に可能にした画期的な刺激法である。実際にTMSが臨床応用されるようになったのは,1985年のBarkerら1)によるデモンストレーションが行われてからである。当初は神経学的検査に利用され,脳外科・神経内科・整形外科領域の臨床あるいは研究面に広く利用されていたが,1993年にHoflichら14)が初めて治療としてうつ病に用いた。当初の成果は,さほどかんばしいものではなかったが,その後刺激パラメーターの改変が重ねられ,徐々にTMSの抗うつ効果は確かなものとして認められるようになった2~22)。さらに,うつ病以外の疾患として統合失調症,強迫性障害,posttraumatic stress disorder(PTSD),パーキンソン病,てんかんなどの治療にも試みられ,一定の効果が報告されている23)。
TMSは刺激頻度の違いにより2種に大別される。神経学的検査に用いられるsingle pulse TMSと,連続して刺激が可能なrepetitive TMS(以下rTMS)である。Single pulse TMSとは数秒に1回程度の不規則な刺激を意味し,rTMSは連続した規則的な刺激を意味しており,なかでも1Hz以下をslow rTMS,1Hzより高頻度のものをfast rTMSと呼んでいる。欧米におけるTMSのうつ病治療の研究では,single pulse TMS3,13,14,16)に始まり,最近では治療効果がより高いとされているrTMS4,11,21)が中心に用いられているようになってきている。
本邦におけるTMS研究では,1999年に筆者らがsingle pulse TMSを治療に用いた症例を初めて報告し6),以後もsingle pulse TMSの抗うつ効果について報告5,7)を行っている。一方, rTMSを用いた研究報告はこれまでにほとんどされていない。
本稿では,single pulse TMSの治療結果7)と,新たに10HzのrTMSを施行した結果を比較し,single pulse TMSおよびrTMSのパラメーター設定に関する考察を行った。また,今回新たに施行したrTMS群に関しては,13例のうち6例についてrTMSの脳血流に与える影響をみるために,治療の前後で99mTC-ECD SPECTの撮影を行った。
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