- 有料閲覧
- 文献概要
世界生物学的精神医学会アジア地区大会の“2004 WFSBP Asia-Pacific Congress”(2004年7月9~11日)がソウルで開かれた。第41回韓国生物学的精神医学会(KSBP)との合同開催で,KSBP理事長のMin-Soo Lee教授が会長を務め,日本生物学的精神医学会(JSBP)が国際学術委員会で協力して大会プログラムを企画した。参加国は韓国,日本,インド,香港,マレーシア,インドネシア,タイ,台湾,中国,オーストラリア,アメリカなどであり,約450名が参加した。韓国を除くと日本とインドからの登録が抜群に多く,いずれも50名を上回った。前日の夕べにはシーラホテルの庭園で歓迎レセプションが開かれたが,時差のないせいか疲れもなく,それはなごやかな懇親会であった。翌朝から3日間の学術集会は尾崎紀夫教授(名古屋大学)の特別講演で幕を開け,特別講演4題,シンポジウム17,一般口演8題,ポスター発表129題だけでなく,若手精神科医セッション,教育ワークショップも行われた。シンポジウムには統合失調症,双極性障害,PTSD,うつ病,不安障害,社会恐怖といった精神障害の病態や治療がとりあげられ,神経画像や認知障害,行動遺伝学,東洋医学をテーマにしたシンポジウムも行われた。JSBPからは14シンポジウムにそれぞれ1~4名が参加し,わが国で行われた最新の研究成果が発表された。韓国の研究の進歩にもめざましいものがあり,本大会は日韓にとって画期的なものとなった。
なかでも特筆すべきは,日韓合同の若手精神科医セッションである。今年2月のケアンズ会議(世界生物学的精神医学会のプレコングレス)に続いて,日本若手精神科医会(Japan Young Psychiatrist Organization;JYPO)と韓国若手精神科医グループが協力して企画した2つのシンポジウムと講演が行われた。統合失調症とうつ病に関する両国の話題と研究成果が紹介され,流暢な英話をこなす若い世代間で活発に意見が交換された。Zohar教授と神庭教授(九州大学)による教育的なコメントがあり,それがこのセッションを一段と盛り上げた。また閉会式では,来年大阪で開催されるJSBP・日本神経精神薬理学会合同大会がアジア地区の若手精神科医(45歳以下)が優れた演題発表をもって応募すれば100名の参加を助成する用意があるとアナウンスされ,大きな関心が寄せられた。そして,こうしたアジア・太平洋地区の精神医学の交流が,日韓の若手精神科医を中心にこれから一段と発展するに違いないという期待感が会場にあふれていた。次いで,本大会で行われたポスター発表の中から国際学術委員会が選考して10題を選び,その表彰式が行われて盛会裡に大会の幕を閉じた。残念ながら閉会式には日本からの参加者の姿は少なく,宴の後という印象が残った。これまでの環太平精神科医会に加えて,アジア・太平洋地区の若い精神科医が手を結ぶ時代がきたことを改めて実感した大会であった。ちなみに世界生物学的精神医学会は2005年6月28日からウィーンで開催される予定である。 (東北福祉大学大学院精神医学)
Copyright © 2004, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.