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日本医学会と日本医師会,学会認定医制協議会が専門医認定制協議会を組織したのは周知のことであるが,昨今,学会認定医を同協会の“専門医”(以下,“協会専門医”)として認定し,その資格を広告する動きが本格化しつつある。現時点ですでに22学会の認定専門医が“協会専門医”として受理されており,これからさらに増えようとしている。情報を公開して国民の選ぶ権利を保障するのはまことに結構なことであるが,学問的な理由ならともかく,広告を許可するために専門医を認定するのだから,その専門性は国民にわかりやすい名称で表示すべきだろうし,当然のことながら,その名称は学問的に妥当なものでなくてはならない。それは,複数の診療科が同じ領域を診療対象にしている場合に特に大切なことで,そうした配慮を欠くと無用な混乱を生じかねない。
なかでも脳にかかわる診療科群がまさしくそうで,それまでの精神神経科(あるいは神経科)に加えて,ここ半世紀の間に心療内科,神経内科,脳神経外科,老人内科,小児神経科があいついで登場した。特に精神神経科は,心療内科や神経内科と対象疾患が重なりやすい。このような重なり合った領域であるにもかかわらず,これからは各診療科が協会認定の専門医資格を一般社会に広告できるようになったのである。専門医資格を広告すれば医療の質が上がるという協会側の考えが,医療収入を生命線とする医療機関に適切に受け止められ,本当に実効を上げるのか心許ないところである。協会の専門医にドクターズフィーを設けるという話もあるが,診療科間の「なわばり争い」的な混乱を助長するようなことだけはあって欲しくない。精神神経科関連の専門医認定には十分な現実検討が必要であるが,精神神経科(神経科)の現状を考えると,このさい診療科としての専門性や独自性を明確にする良い機会でもある。そうした状況の中で,日本精神神経学会は2002年8月の総会で,協会認定専門医制に対応できるように学会認定医制を実施することを決めた。早ければ2004年度の総会に,その委員会案が提出されることになろう。
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