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第46回日本児童青年精神医学会総会は白瀧貞昭会長のもと,2005年11月9~11日の3日間にわたって神戸国際会議場において開催された。昨今の子どもの心の医療に関する関心の高まりを反映してか,1,300名を超えて新記録だった前回総会に匹敵する参加者が集い,最後の発表まで活発な議論が続いた総会であった。内容も盛りだくさんであり,プログラムのすべてを見聞きするのは到底無理であったため,筆者の目にした部分を中心に今総会の印象をまとめてみたい。
まず一般演題の内容に関しては,この何回かの傾向を引き継いで発達障害,特に広汎性発達障害(PDD)と注意欠陥多動性障害(ADHD)に関するものが半数を大きく超えていることが何よりも印象的であった。私が所属する国立精神・神経センター国府台病院の児童精神科新患統計で発達障害が2年前から全体の50%を超えたことからも,このような傾向は当然予測していたところではあった。しかし,実際にポスター発表や一般口演の会場での発達障害関連課題の占有率を目の当たりにすると軽い衝撃さえ覚えた。そういえば,2004年8月にベルリンで開催された世界児童青年精神医学会議では一般演題であるポスター発表はもとより,シンポジウムやワークショップに至るまで発達障害関連課題がずらりと並んでおり,中でもADHD関連課題の数の多さが際立ったため,どこか企業のマーケッティング戦略に巻き込まれすぎているのではないかといった違和感を禁じ得なかったことが思い出される。もちろんわが国においてそれは全く杞憂であって,わが国の臨床家はこのあたりのバランス感覚を失わずにやっていける中庸さを持っているはずだと信じたいが,やはり隆盛を誇る今こそ,発達障害の臨床が目指すところをきちんと提示できる基礎研究や,発達障害児・者とそのサポーターたちが少しでも生きる喜びを多く得られるような治療成果を上げるための臨床研究を地道に続けていく姿勢をとりわけ意識しなければならないのではないだろうか。
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