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第45回日本児童青年精神医学会総会が2004年11月3日(水)~5日(金)の3日間,名古屋大学発達心理精神科学教育研究センター 本城秀次教授が会長を務めて名古屋国際会議場にて開催された。連日,多数の参加者が集まったが,特に初日は祭日のためもあって,ここ数年では最多の1,300人を超える参加者があったという。会場の名古屋国際会議場は広く,ゆったりとしたスペースが会議室の周辺にあり,これだけ多くの参加者があっても学術的集会としての静かな雰囲気が十分保たれていた。
総会プログラムを少し紹介してみる。特別講演2題,会長講演,シンポジウム3題,一般口演103題,ポスター発表23題,症例検討7題,教育講演11題,ランチョンセミナー,教育に関する委員会セミナー,福祉に関する委員会セミナー,子どもの人権と法に関する委員会パネルディスカッションなど多彩なプログラム内容であった。中でも,教育講演11題というのは初めての試みで注目を惹いたし,後で多くの人の意見を聞いてみたが大好評であった。もちろん,若い人たちにとって勉強になったことはいうまでもない。シンポジウムは「1.自閉症の原因を考える」,「2.解離性障害」,「3.乳幼児精神医学」の3題が3日間にわたって毎日行われた。一般口演の中で目立ったのが,近年,社会での興味,関心の高まりと並行する,いわゆる軽度発達障害(ADHD,高機能広汎性発達障害,学習障害など)に関する演題が全体の4割を超える数であったことである。しかし,この軽度発達障害への関心の高さは逆に,この領域がまだ未解明の点が多く残されている領域であることをも示すものであろう。事実,たとえば,ADHDの診断はたぶん,本当はもっと少ない数のはずであろうと思わせるほどの頻度でなされている可能性がある。これは,我々のADHD概念の認識不足による過剰診断によるものであろう。高機能広汎性発達障害についていえば,本当に概念的にADHDと重なりあう部分があるのか否か決めがたい事例があるのも事実である。この場合は我々の概念規定の未熟さによるというよりも高機能広汎性発達障害そのものがADHDと実際にオーバーラップする部分があることによるのかもしれない。他方,学習障害(LD)を扱った演題はもうほとんどみられず,数年前にはもう少しあったはずのLDへの関心が急速に消褪しつつあることを示す結果になっていた。
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