「精神医学」への手紙
論文引用には正確さを求む―「55歳発症の初期分裂病(中安)の1例」論文(田中健滋:本誌46:1193-1199,2004)のoriginalityをめぐって
中安 信夫
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1東京大学大学院医学系研究科精神医学分野
pp.576-578
発行日 2005年5月15日
Published Date 2005/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405100077
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副題に記した田中健滋論文において,そのoriginalityにかかわる点において小生の論文が多々引用・批判されておりますが,その引用には明々白々な誤りがありますので一筆したためます。
著者の田中氏は,小生が提唱してきた初期分裂病(精神分裂病の呼称変更に伴い,すでに小生は初期分裂病を初期統合失調症へと改めていますが,議論の対応上,本稿では初期分裂病という名称を用います)と症候学的には合致するものの,その発症年齢が55歳という症例を,初期分裂病の「遅発例」(以後,田中氏の論述にはカギ括弧を,また重大な誤りには下線を付します)として報告しておられます。初期分裂病の発病年齢について小生ら4,5)はこれまで,自験90例の検討において物心ついた頃(物心症例)と14~15歳頃前後(非物心症例)にピークを有する二峰性の分布を報告しており,後者の最高年齢が27歳でしたので,確かに55歳発症例は新しい知見と考えます(ただし,初期分裂病は1つの病期型ですから,遅発パラフレニーや遅発緊張病など広く遅発統合失調症Spätschizophrenieと呼ばれる臨床単位の初期段階として認められる可能性は十分にありました)。
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