Japanese
English
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
心筋症の研究・治療をめぐる最近1年間の話題 近年の分子遺伝学的解析により,一部の特発性心筋症(Idiopathic Cardiomyopathy:ICM)の病因遺伝子が同定され,肥大型心筋症(HCM)はサルコメア収縮機能異常に起因する代償性心肥大,拡張型心筋症(DCM)は細胞骨格異常に起因する収縮伝達機能異常あるいはミトコンドリア機能異常に起因する心筋細胞脱落がその病態であると考えられるようになってきている.ICMのうち特にDCMでは,収縮障害より心不全を呈することが多い.これまでの内科治療としては利尿薬,強心薬,血管拡張薬が用いられていたが,最近心不全の発症に交感神経系やレニン・アンジオテンシン・アルドステロン系を中心とした神経体液性因子が関与することが明らかになり,ACE阻害薬,AT1受容体拮抗薬,β—blockerの併用が盛んになってきている.ATLAS1),CIBIS2,3),RALES4)などの大規模臨床試験においてもそれらの薬剤の有効性が証明されてきている.しかし,このような試験においてもNYHA IV度の重症心不全で特に症状が最近不安定になった症例などは除外されていることもあり,いまだ重症心不全に対する効果の証明はされていない.また,個々の患者によっては薬剤の使用により病態が増悪することもあり,その薬剤のはっきりとした適応基準はない.内科的治療抵抗例および重症心不全例に対する外科的治療法として心臓移植があるが,ドナー不足,脳死判定の難しさ,拒絶反応,莫大な医療費など多くの問題により依然としてその症例数は少ない.その代用またはブリッジとして補助心臓5,6),左室形成術(Batista手術7),僧帽弁輪縮小術)などが施行されているが効果は現時点では一時的である.したがって,現在でも重症心不全の予後は非常に悪く,今までとは異なる新しい観点からの治療法が待望されている.
Copyright © 2000, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.