巻頭言
Anastomotic Neointimal Fibrous Hyperplasia(ANFH)をめぐって
江里 健輔
1
1山口大学医学部第1外科
pp.103
発行日 1993年2月15日
Published Date 1993/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404900610
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外科医にとって重要なことは手術死亡率を低くし,術後のQuality of Life(QOL)を高めることである.10年前までは外科医の最大目標は前者であって,後者はそれほど考慮されていなかった.しかし,手術成績の向上とともに最近では,QOLを高める術式が強く要求されるようになった.
高齢化社会とともに閉塞性動脈硬化症に対する血行再建術は頻回に行われるようになった.しかし,血行再建術の多くはQOLを高めようとするもので,手術そのものが延命に繋がることは稀である.QOLを高めるためには再閉塞を予防することが最も重要である.抗血栓性人工血管,atraumatic sutureなどの開発により,血行再建後初期閉塞例はほとんどなくなり,晩期閉塞が血行再建術成績向上の鍵となった.血行再建路晩期閉塞の原因には,吻合部内膜過形成anastomotic neointimal fibrous hyperplasia(ANFH),グラフト構造異常,動脈硬化病変進行などがある.再狭窄・再閉塞はANFHでは血行再建術後1カ月頃から,グラフト構造異常のうち静脈グラフト異常では術後2カ月から,人工血管グラフト異常,動脈硬化病変進行ではそれぞれ術後18カ月頃から始まるとされている.これらのうち,手術手技に関するものはANFHである.ANFHの本態は平滑筋細胞,筋芽細胞,蛋白分泌性の筋線維芽細胞と細胞外結合織の複合体である.
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