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特集 Onco-Cardiology—がんと循環器における新しい関係
がんに対する放射線療法に起因する冠動脈疾患
Radiation Induced Coronary Artery Disease:Cases and Clinical Review
黒田 忠
1
Tadashi Kuroda
1
1大阪府立成人病センター循環器内科
1Department of Cardiology, Osaka Medical Center for Cancer and Cardiovascular Diseases
pp.881-892
発行日 2016年9月15日
Published Date 2016/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404206028
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がんに対する放射線療法
現在のがん治療は,手術療法,化学療法と放射線療法を三本柱として,それぞれを単独で,もしくは併用して行うことにより成り立っている.その中で放射線療法には,身体的負担が少なく,外科手術と異なり臓器の機能・形態を温存できること,化学療法と異なり照射野以外の正常組織を障害しないことなどの特長がある.
Hodgkin病(Hodgkinリンパ腫)は現在では早期であれば95%近く,全例でも85%以上の5年生存率が期待できる比較的治癒率の高いがんであるが1),その予後の改善の一因に放射線療法の進歩があることに議論の余地はない.乳癌においては乳房温存手術後に放射線療法を追加することにより再発率と乳癌による死亡を低減することができる2).また,食道癌に関する最近の報告では,外科的切除が可能な食道癌において,外科手術単独よりも術前に化学放射線療法を併用したほうがより良好な生存率が得られている3).さらに,粘膜下層に留まらないため内視鏡的治療の適応とはならないが,リンパ節転移のない早期食道扁平上皮癌(Stage Ⅰ)に対して,化学放射線療法のみでも高い完全奏効率が得られることが明らかとなり,現在の標準治療である外科手術との比較試験が行われている4).肺癌においては,切除不能なstage Ⅲの非小細胞肺癌に対しても,cisplatinを含む化学放射線療法により7〜19%の5年生存率が期待できると報告されている5).
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