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背景
近年肺動脈性肺高血圧症(pulmonary arterial hypertension;PAH)に対する治療薬が進歩したことより,肺高血圧症(pulmonary hypertension;PH)への関心が高まり,臨床診療,基礎医学の分野で活発な議論が展開されるようになってきている.原発性肺高血圧症(primary pulmonary hypertension;PPH)は希少かつ難治性疾患として認知され,5年生存率は30%程度と予後不良であったが,治療薬の進歩により最近の報告では5年生存率70%を超えるまで改善してきている(図1)1〜7).PPHという呼称は,現在では明らかな原因のない特発性PAH(idiopathic PAH;IPAH)と家族歴あるいはPAH発症に関与する既知の遺伝子異常をもつ遺伝性PAH(heritable PAH;HPAH)に分類されている.IPAHならびにHPAHの治療が進歩するのに伴い,全身疾患に起因するPHに対してもスポットライトが当てられるようになり,現在ではPHは希少な難病ではなく,様々な全身疾患に合併する一病態として認識されるまでになった.WHOによるPH疾患分類によれば,PHは大きく5つのグループに分割され,グループごとに治療的なアプローチが異なる(表1,2)8).PAH治療薬が臨床の現場で使用できるようになり,その恩恵を受ける患者は確実に増加しているものの,本邦ではPAH治療薬は本来I群のPAHのみに保険適用があり,その他の群のPHに対しての有効性・安全性は証明されていない.PHの診療において,PHの早期診断と正確な疾患分類が治療戦略を立てるうえでは必須であり,より予後を改善する意味で重要となっている.PHの存在診断は右心カテーテル法による肺動脈圧の直接測定により,平均肺動脈圧(mean pulmonary arterial pressure;mPAP)が25mmHg以上を証明することで得られる.右心カテーテル検査は侵襲的検査であり,検査のためには通常入院が必要となるためPHのスクリーニング検査として全員に行うことは現実的ではない.そのため,心エコー検査などの生理検査やコンピュータ断層撮影法(computed tomography;CT)や核磁気共鳴映像法(magnetic resonance imaging;MRI)などの画像検査が非侵襲的なスクリーニング検査として用いられている.一方で,PHがどの疾患群に属するかの鑑別や,合併疾患の診断と評価にも多種多様な画像検査が用いられている.特に最近のコンピュータ画像診断学の進歩は目覚ましく,高分解能CT(high resolution CT;HRCT)では肺野・肺血管の評価を高い空間分解能で行うことができるようになり,心臓MRIでは高い時間分解能を発揮し,心臓を4次元で評価することができるようになった.本稿では,PH診療における画像検査の役割を概説し,それぞれのモダリティーが臨床の現場でどのように用いられているかを,最近の知見を交えて述べる.
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