Japanese
English
Bedside Teaching
蘇生後の肺水腫
Postcardiopulmonary resuscitation pulmonary edema
土肥 修司
1
,
武島 玲子
1
,
斎藤 重行
1
,
清野 秀子
2
Shuji Dohi
1
,
Reiko Takeshima
1
,
Shigeyuki Saito
1
,
Hideko Seino
2
1筑波大学臨床医学系(麻酔科学)
2筑波大学病院麻酔科
1Department of Anesthesiology, Institute of Clinical Medicine, The University of Tsukuba
2Department of Anesthesiology, Hospital of Tukuba University
pp.1061-1066
発行日 1986年10月15日
Published Date 1986/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404204940
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緒言
心拍動の停止,それに続く心肺蘇生,この状態では急激な循環動態の変化が生じている1)。特に,25年前Kouwenhovenら2)によって臨床導入され,最も一般的な心肺蘇生の手技である非開胸式心臓マッサージ中には著明である。胸骨の圧迫時には,心臓の左右の4房室にはほぼ同程度の圧が生じ3,4),肺動脈圧もほぼ大動脈圧と等しい5)。この肺動脈圧の上昇は,肺毛細管を含む肺循環系に大きな変化をもたらす。さらにまた,心停止に至った種々の病態や蘇生中のさまざまな因子—無酸素状態,高炭酸ガス血症,カテコールアミンの遊離あるいは投与,輸液など—も肺循環に悪影響を与える。
肺水腫の発生には,1)肺毛細血管壁を介して静水圧と膠質浸透圧差のバランスの変化,2)毛細血管壁の透過性の亢進,3)胸腔内圧の変化,4)リンパ流の閉塞,のひとつあるいは複数が関与する6〜8)。著者の一人は9)心肺蘇生後に著明な肺水腫を呈した症例を20例経験し,上記1),2),3),の因子が変化し,肺水腫が発生することを報告した。またNagelら10)は,心肺蘇生施行症例の剖検例694例中321例(46%)に肺水腫を認めている。本稿では蘇生後の肺水腫の成因,治療に関して,症例の提示とともに概説する。
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