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はじめに 電解式血流計は,クリアランスに利用する水素を,電気分解により直接,組織中で発生させる方法で1),従来の吸入式水素クリアランス法と比較して,取り扱いがはるかに容易であるという利点がある。しかし,本法では,Clearance Curve (以下,C.C)に拡散による影響が加わるために,血流量算出が複雑になる1)という難点がある。ところが,この算出と補正にC.Cの半減期を利用する方法2),
f=69.3×(1/TA−1/TB)(ml/min/100g) (1)
f:血流量,TA:生存中のC.Cの半減期,TB:心停 止後のC.Cの半減期
が提唱されて以来,各種臓器の血流量測定法として急速に普及してきた。
しかし,本法によるC.Cの対数化グラフは,曲線,または異なる傾きをもつ複数の直線で構成されているとされ,さらに電気分解の通電時間,通電電流など水素の発生条件を変えても,グラフの形状そのものが変動する2)といわれている。したがって,本法によるC.Cには一定の半減期を定めることができず,測定時間,あるいは上記の水素の発生条件によっても"半減期"は変化する。このため,実際の測定にあたっては,水素発生の条件を適当に定め,グラフがほぼ直線に近似できると思われる点を判定して,この部分の傾きからTA,TBを定めている2)のが現状である。したがって,血流量の算出値に意図しない誤差が入りこむ可能性があり,これを排除するための明確な基準を定めることが必要であるが,この点について理論的検討を加えた報告は皆無である。これは,本法によるC.Cの生成機序の解明に必要な,拡散現象の解析がきわめて困難なためである。われわれはこの点につき,Computer Simulationにより理論的検討をすすめてきたが,その手がかりの一端を得ることができたので,ここに報告する。
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