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講座
わが国における狭心症の臨床的検討—大学病院における研究
Clinical observations in patients with angina pectoris in Japan
内藤 政人
1
Masahito Naito
1
1慶応義塾大学医学部内科
1Department of Internal Medicine, Keio University, School of Medicine
pp.499-509
発行日 1976年6月15日
Published Date 1976/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404202911
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わが国において狭心症と診断された患者と欧米のそれとは本質的な差があるのではないかとの疑問がある。その根拠は以下の事実の重なりによる。すなわち,笹本ら1)が1972年に行なったアンケート調査の中で,各種医療機関の心臓病患者の疾患分類をみると,狭心症と診断されている患者数が大学病院では少なく,中小病院では非常に多い。しかるに,動脈硬化性心疾患で死亡する患者は中小病院で必ずしも多くないし,慶応大学病院を訪れる患者のうち動脈硬化性心疾患と診断されるもので他の医療機関では狭心症の診断がつけられている例も少ない。つまり,狭心症と診断された患者が治ってしまうか,死亡しないことになる。
当然狭心症の診断のたしかさも問題になる。狭心症を心筋の酸素需要と供給とのアンバランスによる心筋虚血にもとづく症候群2)と考えると,心筋に虚血がおこっていることを臨床的に客観的証明を得ることが不可能な現在,Heberdenの記載3)以来ほとんど進歩がない問診法に基礎をおいた診断がなされている。いわゆる胸痛を主訴とした患者に狭心症の診断名を与えた場合,欧米では冠状動脈硬化による虚血性心疾患であることが多いが,わが国ではその可能性が少なくなることは容易に考えられる。
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