Japanese
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講座
生体膜
Biological Membranes
奥田 稔
1
Minoru Okuda
1
1順天堂大学医学部臨床病理学教室
1Department of Clinical Pathology, Juntendo University, School of Medicine
pp.881-887
発行日 1970年10月15日
Published Date 1970/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404202195
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はじめに
生体膜と一口にいっても,その内容は機能的にも,形態的にもきわめて多彩である。
従来,膜の研究は主として細胞膜の透過性についての動力学的解析を中心に発展してきたが1),電子顕微鏡などの観察手段,膜の分離技術の進歩にともなって,現在では生理学,生化学,形態学にまたがった共通の研究課題となってきている46)47)。
臨床医学においても一連の先天性溶血性疾患の病因について,例えば重症性地中海貧血の赤血球膜のplaque構造の異常,遺伝性spherocytosisの赤血球におけるNaイオンleakの増大,acanthocytosis患者の赤血球膜脂質構成の異常,特にレシチン含量の減少など17)18),膜の機能的,構造的異常をとらえて解明されるようになった。
炎症性疾患に際しての血中逸脱酵素の増加は細胞膜透過性の亢進に起因するものであり,また進行性筋ジストロフィー患者のクレアチン放出増加も膜の透過性異常に直接的に関連した現象と推定される。この他,白血球の食作用,血栓形成時の血小板の粘着,凝集能はそれぞれの細胞の膜機能そのものであり,また吸収不良症候群,発作性夜間血色素尿症,腎尿細管の再吸収障害,医薬品の作用効果などについて膜との密接な関連性が指摘される。
以下に,きわめて基礎的な内容であるが,生体膜の構造と物質輸送について概説した。
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