Japanese
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診療指針
弁膜閉鎖不全症の外科的療法
Surgery of Valvular Insufficiency with Palliative Procedures or with Replacement Procedures.
田口 一美
1,2
Kazumi Taguchi
1,2
1社会保険広島市民病院心臓外科
2広島大学医学部上村外科教室
1Dept. of Cardiovascular Surgery, Hiroshima Citizens Hospital
2Dept. of Surgery, Hiroshima University
pp.715-725
発行日 1964年10月15日
Published Date 1964/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404201368
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序論
弁膜閉鎖不全症を開心術以外の方法で根治せしめんとする試みは多くの外科医の努力にもかがわらず,成果をもたらすことなく,すでに過去のものとなつた。したがつて現在,記述に価する本症の外科的療法は開心術によるものであり,その臨床的成功の歴史は比較的新らしく,1957年前後に考案されたPalliative surgeryに始まつたものである1)2)。以後,現在のように多数の人工弁によるReplacement surgeryが実施されるようになるまでには数多くの実験的,臨床的研究が行われてきた3)。ここで本症の外科的療法の歴史と現況をふりかえつてみて明言すべき事実は「現在Re—placement surgeryに期待できるところは大きいが,これを主として広く実施すべき段階にまで発展しているのではなく,その適応を厳重にし,2年以内のLife expectancyの症例に限るべきであり,Palliative surgeryも予後及び成果に一定の制限があるにしても,症例によつてはたとえ一時的な好転にしても期待できるので,決して軽視すべきでない」ということであろう。以下,かかる観点から,僧帽弁,大動脈弁,三尖弁閉鎖不全及びそれらの混合弁膜症の順にこの方面の問題点を明らかにし,自家経験4)〜11)を中心に批判を行なつてみるとともに,この論述がようやく発展の機運のみえる本邦のこの分野の進歩の一助たることを念願するものである。
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