Japanese
English
綜説
脳幹障害と肺水腫
Brain Stem Lesion and Pulmonary Edema
勝木 司馬之助
1
,
福留 徹
1
Shibanosuke KATSUKI
1
,
Toru FUKUTOME
1
1熊本大学医学部第一内科教室
11st Department of Internal Medicine, Kumamoto University College of Medicine
pp.658-665
発行日 1955年11月15日
Published Date 1955/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404200295
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緒 言
肺水腫の発生要因は甚だ複雑であつて之を単一の機転で説明することはもとより不可能である。実験的に肺水腫を発生させた多くの報告を見るとその方法のねらいは肺毛細管の透過性を変化せしめようとするもの,右心室の機能を保持し乍ら左心室不全をもたらそうとするもの,或は神経性因子の役割を重視しようとするもの等の範疇に分けることが出来る。然し肺水腫が発生する為の基本的な障害は要するに肺毛細管からの液の滲出が肺リンパ管からの液の再吸收能力を凌駕して強く起ることにあるのであつて,この様な不均衡を招来する因子には多数の事項が関与すると考えられる。Altschule1)はこれを血清蛋白量,肺血流量,肺濾過圧,肺血管圧,肺血管運動の変化,肺毛細管透過性,肺毛細管濾過面積,肺リンパ機能,気管支閉塞,肺の細胞外液,全身動脈圧,心室障害呼吸中枢の状態等の面から検討して第1表の様な項目を挙げておる。即血行力学的要素が強調されておるのであるが,それを支配する神経性因子も亦甚だ重要な役割を演ずるものである。
中枢神経系疾患の際に屡々急性肺水腫が合併しそれが中枢鎮静剤によつて抑制されることは臨床家の間には古くから知られ,本症と中枢障害との密接な関連が推定されて来たが,本症の発生に関ある中係枢の局在,或は本症発生に関与する神経性機構の詳細については今日に至るも未だ明かではない。
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