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1993年,国立循環器病センター(現 国立循環器病研究センター)にレジデントとして勤務していた際に,Warren M. Jackman先生のお弟子の先生が同センターを訪れ,発作性上室性頻拍症の症例にカテーテルアブレーションを実施するのを目の当たりにした.頻拍は期外刺激法で容易に誘発され,通常型房室結節リエントリー性頻拍であった.その先生が解剖学的アプローチにてアブレーションカテーテルの先端を動かしながら後中隔の冠静脈洞入口部上縁の高さで三尖弁輪部から下大静脈方向に線状焼灼を2度施行し,「もう治りました」,とのこと.その後の誘発で頻拍は全く誘発されずに根治した.電気生理検査により確定診断が得られても結局は検査前と同様に抗不整脈薬の内服を継続しなくてはいけない,ということも多々あった時代に根治治療がこのようにあまりに簡単に,そして短時間の手技で得られたことに驚き,そして感動したことを今でも鮮明に覚えている.その後,1998年,ボルドー大学のMichel Haïssaguerre先生が発作性心房細動を惹起する上室性期外収縮の94%が肺静脈起源であることを報告し,心房細動症例もアブレーションにより抗不整脈薬治療なしで洞調律を維持できることを示した.さらに,その後の3次元マッピングシステムの導入とその進歩により,心臓CT,MRI,およびエコー像をマッピングシステムに取り込んで(イメージ・インテグレーション),心臓内のカテーテル位置をリアルタイムに正確に確認しながら焼灼を行うことが可能となり,心房細動に対するアブレーション治療は急速に発展,普及した.2012年は心房細動アブレーションが本邦のアブレーション件数の半分以上を占めることになった.
一方,心室性不整脈に対するアブレーションに関しても,3次元マッピングシステムとイリゲーション・カテーテル(従来よりも深部の焼灼が可能)の導入,および経皮的アプローチによる心外膜アブレーション法の確立により,拡張型心筋症,虚血性心筋症,心サルコイドーシスなどの器質的心疾患に合併する心室頻拍に対するアブレーションの成績が向上した.Brugada症候群の心室細動重積状態に右室流出路に対する心外膜アブレーションが有用であることも海外で報告され,その対象疾患は年々,拡大してきている.
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