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はじめに
間質性肺炎には原因が特定されない特発性間質性肺炎と,原因疾患に伴う,あるいは原因が明確な二次性間質性肺炎(表1)がある1).特発性間質性肺炎のなかで最も難治であるのが特発性肺線維症(idiopathic pulmonary fibrosis;IPF)(図1~3)と線維性非特異性間質性肺炎(fibrotic non-specific interstitial pneumonia;f-NSIP)(図4,5)である.進行性肺線維症とも言われるこれら両疾患の病像は相異なるものの,臨床経過はよく似ている.一方,NSIPの多くを占める細胞性間質性肺炎(cellular NSIP;c-NSIP)(図6)と器質化肺炎(organizing pneumonia;OP)(図7)は,ステロイドや免疫抑制剤が奏効するものがほとんどであり,治療上問題になることは少ない.NSIPでも細胞性と線維性の中間的なものもf-NSIPに分類される.その場合,完治は望めないものの,やはりステロイドや免疫抑制剤による治療で呼吸機能は改善する.剝離性間質性肺炎(desquamative interstitial pneumonia;DIP)や呼吸細気管支炎関連性間質性肺炎(respiratory bronchiolitis-interstitial lung disease;RB-ILD)はともに喫煙との関連が強いとされ,禁煙とステロイド療法で多くは改善する.原因不明のリンパ球性間質性肺炎(lymphocytic interstitial pneumonia;LIP)や急性間質性肺炎(acute interstitial pneumonia;AIP)は極めて稀である.LIPはステロイドを中心とした免疫抑制剤を,AIPはIPFの急性増悪や急性肺損傷(acute lung injury;ALI)に準じた治療を行う.
二次性の間質性肺炎の原因疾患としての代表格ともいえる膠原病でも様々な肺病変を呈するが,実際的には治療に奏効しやすいNSIPとOPのパターンを呈するものが多い.しかし,やはりIPFにみられるようなUIPやf-NSIPの病理パターンを呈する症例では治療が困難である.また,慢性過敏性肺炎も間質性病変がf-NSIPの病像を呈するものは治療が困難である.サーファクタント蛋白BまたはCの遺伝子異常を持つ家族性肺線維症もまたf-NSIPパターンが多い.逆にIPFはその難治性が強調されるが,HRCT上特徴的な蜂巣病変を確認されていても,病態が比較的長期に安定している症例もある.しかし,こうした症例でも感冒様症状などの後に急激に急性肺損傷を発症する急性増悪と呼ばれる病態が起こりうる.この急性増悪がまたIPFの難治性を印象付けている.
現在の時点でIPFに対する治療薬のエビデンスのレベルは残念ながら低い.その原因のひとつとして,これまでのIPF患者を対照とした治療試験がIPF患者の重症度という概念を欠落してきたことが挙げられる.
本稿では難治性間質性肺炎の日本の現状における治療について述べるが,このような進行性肺線維症に対する治療試験の困難な理由,重症度の概念などに関して説明し,日本国内の限られた専門施設でなされている治療法の現状について紹介する.
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