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はじめに
1987年の日本動脈硬化学会冬季大会において,高脂血症に関するコンセンサス・カンファレンスが行われ,そこではわが国の専門医のコンセンサスのもとに高脂血症の診断基準値が提案された.当時は,ほとんどわが国のエビデンスがまとめられていないためであった.その後に発表されたわが国の大規模長期の疫学コホート研究であるNIPPON DATA80やIsoらの10年以上にわたる住民検診データをみても,この診断基準は検証された.アメリカでは,MRFITやFramingham Heart Studyという大規模疫学研究のエビデンスに加え,1984年に発表されたレジンによる一次予防試験でコレステロール低下療法がイベント抑制に有効であるという治療エビデンスを獲得し,1988年にNational Cholesterol Education Program(NCEP)が発表された.その後,1993年,2001年とNCEPは二度にわたって改訂が加えられ,2004年には,直近のエビデンスを踏まえ一部改訂が行われている.この考え方は,わが国のガイドラインにも大きな影響を与え,1997年に「高脂血症診療ガイドライン」1)が一定のエビデンスをもとに作成された.その後,わが国の大規模な観察的研究であるJ-LITの発表により,危険因子の考え方がわが国でも立証され,動脈硬化性疾患の危険因子を考慮したガイドラインとして『動脈硬化性疾患診療ガイドライン』2)が2002年に発表され,わが国のガイドラインの大きな枠組みが形成された.
それから5年以上が経過し,この間に,わが国においても新しいエビデンスの蓄積がなされてきた.代表的なものに,疫学調査研究としてのNIPPON DATA80の19年間の観察結果3)や臨床介入研究のMEGA Study4),JELIS5)がある.これらにより,わが国においても高コレステロール血症あるいは高LDLコレステロール(LDL-C)血症と冠動脈疾患(coronary artery disease;CAD)や脳梗塞が密接に関係していることや,高LDL-C血症を治療することでこれらの疾患を予防できることが明らかにされてきた.これらのエビデンスをもとにガイドラインが改訂された6).
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