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心エコーをめぐる最近の話題
新世紀も3年目を迎え,コンピュータテクノロジーの進化に伴う情報通信速度はさらに加速を続け,その進化速度を形容した“ドッグイヤー”という表現もすでに過去のものとなりつつある.この状況下において,ITの恩恵を直接享受する超音波診断装置の進化には目を見張るものがあり,これまで培われてきた“新技術”の一般応用がさらに進み,成熟の時期に入った.10年前に登場した組織ドプラ法は,ストレイン,ストレインレートイメージングへと進化を遂げ,cardiac resynchronization therapyにおける臨床応用に関する報告も相次いでいる.数年前はハイエンドの機種を必要とした冠動脈の描出も,汎用機種にても描出可能となり,その範囲は左冠動脈の描出にとどまらず,右冠動脈,バイパスグラフトに至り,冠血流予備能の評価,狭窄病変診断へと応用が進んでいる.心コントラストエコー法は心腔内造影,ドプラ信号の増強効果から心筋コントラスト法へ関心は移った.さらに,microbubbleの活性化白血球へのターゲティングを行うことで,炎症の画像化も報告されてきた.3次元エコーは画像の再構築は過去のものとなり,プロトタイプであったリアルタイム3次元エコーが市販機種に搭載されて発売されるに至った.
1 組織ドプラ法の新たな展開
組織ドプラ法の臨床応用が始まり10年が経過するが,これまで米国を中心としてパルス組織ドプラ法が,欧州ではカラー組織ドプラ法を用いた局所心筋の機能評価がすすめられてきた.本法により心臓の短軸方向の壁厚増加,長軸方向のセグメント短縮が評価可能であり,パルス組織ドプラ法により得られる拡張早期指標は前負荷の影響を受けにくいことから,左室の拡張障害の評価や左心不全の予後評価に関連する報告も多数みられる.しかし,組織ドプラ法は心臓自体の動き,すなわちtranslation,rotationの影響やフレームレートの影響も受けやすいため,その評価には限界が生じていた.数年前より超音波診断装置のハイフレームレート化が進むとともに,組織ドプラ法の応用として,同一超音波ビーム上に並ぶ2点の速度差をその間の距離で除した値として算出されるストレインレートあるいはその積分値であるストレインの測定が実用化されてきた.この方法は再現性にやや難があるものの,これまでの組織ドプラ法の弱点であったtranslationやrotationの影響を受けにくいため,本法を用いた心筋局所の詳細な機能評価が期待されている1~3).
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