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綜説
肺癌の分子標的治療薬―Gefitinibが先駆けた新たな肺癌の臨床とbiology
Molecular Targeting Drugs for Lung Cancer:New horizon of lung cancer biology and clinic by gefitinib
貫和 敏博
1
,
井上 彰
2
Toshihiro Nukiwa
1
,
Akira Inoue
2
1東北大学加齢医学研究所呼吸器腫瘍研究分野
2東北大学医学部附属病院遺伝子・呼吸器内科
1Department of Pulmonary Biology, Bioinformatics and Medicine, Institute of Development, Aging and Cancer,Tohoku University
2Respiratory Medicine and Translational Research Clinic, Tohoku University Hospital
pp.685-694
発行日 2003年7月1日
Published Date 2003/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404100686
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有効性が前面に出たシグナル 遮断薬としての分子標的治療薬
1・先鞭を切ったImatinib(STI571,Glivec)
歴史的に癌化学療法は,白血病に対する治療が固形癌治療の先鞭をつけてきた.その伝統はHematology-Oncologyと称するspecialtyにもみられる.しかし,癌化学療法の理念はTotal kill of leukemic cellで知られるように,殺細胞効果で薬剤をスクリーニングする.白血病細胞も正常細胞にも殺細胞効果を示し,幹細胞増殖による回復の差を臨床効果にねらう従来の抗癌剤は,造血抑制,感染,消化器症状などの重篤な副作用との戦いであった.しかし,それでも血液腫瘍は十分な寛解率を示すのに対し,ほとんどが部分効果である固形癌の非小細胞肺癌とは隔世の感覚がある1).
血液腫瘍のひとつ慢性骨髄性白血病(CML)は19世紀に認識された白血病であるが,1960年染色体異常としてフィラデルフィア染色体(Ph1)が見出された2).引き続く染色体研究,さらに分子生物学的手技によりこの染色体は第9染色体と第22染色体間の相互転座t(9:22)(q34:q11)であり,かつ本来第9染色体遺伝子であるAblの第1intronが第22染色体のbcr(breakpoint cluster region)で切断されBcr/Abl融合遺伝子を形成することが明らかになった3).Abl遺伝子そのものの生物学的意義はなお不明であるにもかかわらず,Bcr/Abl融合蛋白は,高チロシンキナーゼ(TK)活性を持ち,このシグナルが白血病化に直接関与することが明らかになった4).
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